+-- Words from ANADARE --+



第1話冒頭モノローグ

私は、彼の名前を知っている。
彼の名前はいつも、張り裂けそうな、
いとおしさとともにあった。
だけど、もう二度と、彼の名前を呼ぶことはないだろう。
5年前のあの日、彼は死んでしまった。
そして私は、許されぬ恋に終わりを告げ、
夫の待つ家に帰っていった。
私は彼の名前を知っている。
彼の名前はいつも、甘い口づけのような、
恐怖とともにあった。



駿介の手紙

梓、君と別れてひと月がたつ。
僕は不思議でならないんだ。
君が僕のそばからいなくなった後も、
世界は終わろうとしない。
この世界の風景は、まるで初めから君なんて
いなかったかのようにあり続けている。
僕は忘れない。君と見つけたあの星の場所を。
僕は忘れない。君と過ごしたあの海の色を。
僕は忘れない。君の髪、君の指、
愛しているとささやいた君の声を。


梓、僕は君を忘れない。
君と過ごした記憶が、今群青の空にのぼっていく。
いつかそれが雨となって、この世界に帰ってくるのを
僕は待ち続けている。
いつかもう一度出会える時まで、
僕は君を待ち続けているんだ。
それまでは少しだけ、さよならだ。
                     久遠駿介



第2話冒頭モノローグ

駿介。
わたしはもう二度とあなたの名前を呼ぶことはない。
5年前の夏、私は夫以外の男を愛した。
結婚したばかりだというのに、仕事で家に帰らない夫。
退屈な毎日。
わたしが恋をしたのは、ただその夏、
海に連れて行ってくれる人が
ほしかっただけなのかもしれない。
いつか夏は終わり、潮が引くように
わたしは家に帰っていった。

だけど、夏の終わりに気づかなかった男は、
何度もわたしのドアをノックした。
コンコン、どうして愛した?
コンコン、どうして愛を捨てた?
どうして、どうして、どうして?



駿介の遺書「梓へ」

梓、君がこの手紙を読むことはあるんだろうか?
その時、僕はどこにいるんだろう? もしかしたら、
僕はもう死んでいるかもしれない。
今日、君から電話があった。「僕に会いたい」という。
驚いたよ。君と別れてから数ヶ月間、
僕はあまりにひどいことを君にしてきたから。
君を失ってしまうことが怖くて仕方がなかった。
だけど、これだけは信じてほしい。
誰よりも君を愛してる。
君は「明日、ここで会おう」と言ってくれた。
不思議だった。どうして?
僕は君に殺されるのかもしれない。
それでもかまわない。君の手で殺されるなら。
それが僕の望みだ。
君に傷つけずにいられない僕を消してくれ。
僕は喜んで、この海とともに消えるよ。



セリフ集


数馬  「こうやって目を閉じて、
     ただ波の音だけを聴いてると
     見えてくるんです。遠い記憶の中の海が。
     すべてを忘れて、こうやって記憶の中の海に
     心を沈ませていく。
     すると懐かしい思い出の海の中で、
     不思議と心が安らぐんです。」


数馬  「あなたは記憶の中の海で、
      誰と会いましたか?」


藤城  「いつかそれは必ず戻ってきます。
      その時こそ、本当におそろしいことに
      なるんですよ。」


サキ  「蟲ざぞ。あの家には蟲がついているのざぞ。
      蟲がついちまった家は、もうおしまいざぞ。」

    「蟲め、蟲め、蟲め。お前が連れてきたのざぞ。
      まがましき蟲をお前が連れてきたのざぞ。
      この蟲つき女め。
      いねー!いぬのじゃ!
      さもないとこの村でまた死人が出るのざぞ。」

    「蟲めー。蟲の女め。蟲と交わりし女め。
      もうおしまいざぞ。
      お前はもう死ぬのざぞ。死ぬのだぞー!」


樹里  「あなたは呪われている蟲の女よ!」。

草間  「妻の最期をみとってやれなかた。
      妻は俺を恨んでいたと思う。」

志摩子 「顔を合わすことがイヤになったら
      家族なんておしまいよ。」

梓   「そして壊れたんです、家族が。」

欧太郎 「お前の顔を見るたびに、
      家族が壊れたときを思い出す。」

欧太郎 「この家族にはもう一円の価値もなくなった。」

数馬  「壊れたものは元に戻らないよ。
      壊れたなら又作ればいい。
      僕と、新しい家族を。
      君は僕の子供を生むんだ。」


数馬  「大切なものを失うのは、どんな気がしますか?
      僕にはわかります。
      あなたの痛みが手に取るようにわかる。」
      (欧太郎に向かって)


数馬  「おかしなことを言うね。
      どうして娘を他人の手に渡さなきゃ
      いけないんだ。
      それに君は勘違いしている。
      食事が済んだら君はあの家へ
      帰っていいんだよ。
      君の場所はもう用意してある。
      君には用がないんだ。
      ・・・僕が必要なのは・・・あの子だから。」


数馬  「人が死ぬのは心臓がとまるときじゃない、
      脳が止まる時でもない。
      人が死ぬのは忘れられた時だ。
      愛した人の事を忘れずにいれば
      いつまでも生き続ける。
      記憶のなかでいつでも逢えるよ。
      だから死ぬことは
      少しだけサヨナラすることだ。」





草間五郎VS数馬

数馬 「年上に向かってお説教ですか。
    そんなことはもう何百年も前から考えてきた。」

草間 「まだお前に人としての心が残っているなら聞け。
     人の死とはなんだ。
     死とは生きる為の糧だ。
     人は死ぬからこそ精一杯に生きようとする。
     川は流れてるからこそ美しくある。
     流れの止まった川の水はただ腐るだけだ。
     死ぬ事の無いお前は生きてなどいない。
     むし・・・けら」


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